MENU

シリーズ-東北大学を訪ねて[第3回] インタビュー:大隅典子 -クジラと酵母の間で-

2012. 11. 11
文:菅野康太

前回までの記事で、なんの断りも無くGCOEという言葉を使ってきたが、ここで少し科学研究費(科研費)について補足したい。まず、COEとは、「center of excellence: 卓越した研究拠点」の略であり、文部科学省から世界レベルの研究拠点の創出を目指して配分される研究拠点形成費等補助金によるプロジェクト(事業)のことを差す。

COE詳細: http://www.jsps.go.jp/j-21coe/

 

そして、GCOEのGはGlobalの略で、研究だけではなく、世界トップレベルの研究教育機関の創出を目指し、国際競争力のある大学・大学院のプログラムを援助すべくに配分される文部科学省研究拠点形成費等補助金によるプロジェクト(事業)である。

GCOE詳細: http://www.jsps.go.jp/j-globalcoe/index.html

東北大学脳科学GCOE
脳神経科学を社会へ還流する教育研究拠点
http://www.med.tohoku.ac.jp/nsgcoe/ja/

 

その他にも、大型の科研費としては科学技術振興機構(JST)が競争的に配分するCREST(クレスト)やERATO(エラト)などがある。

JST http://www.jst.go.jp/kisoken/
競争的資金 http://www8.cao.go.jp/cstp/compefund/

さて、これまで紹介してきた東北大学脳科学GCOEも、この補助金に採択されていたわけだが、研究教育のみならず、アウトリーチなど、非専門家・一般向けの活動をかなり熱心に行っているのは、これまでお伝えした通りだ。
今回は、その拠点リーダーである東北大学医学部・大隅典子先生のインタビューをお届けしたい。

大隅先生は、研究のみならず自身のブログも有名で、アウトリーチや若手研究者育成にも熱心。また、非常に多趣味であり、芸術やワインを愛されている。私も、自分の生まれ年のワインについて教わった。

ブログ:大隅典子の仙台通信
http://nosumi.exblog.jp/

 

どうしてアウトリーチに熱心なのか、広報専門員やデザイナーを事務局に配置したのかなど、学生さんとの研究の打ち合わせの合間にお邪魔してうかがってみた。

 

 

— 先生は科学者の中でもかなりアウトリーチに熱心だと思いますが、なにか現在にいたる特別な背景や想いなどおありでしょうか。

大隅:まず、私は研究者になるにあたって「ノーベル賞を取りたい!」とか「大発見をしたい!」みたいな大それた気持ちからというよりも、両親ともに生物学の研究者という家で育って、かなり研究というものが身近であったということが大きいんです。母は酵母の研究者として大学で学生さんの指導もしていて、父は国の研究機関でクジラの研究をしていました。父がクジラ、母が酵母で、私は(サイズ的に)その中間のネズミで研究をしています(笑)。

さて、父は、クジラの研究をしていたわけですが、かつて、アメリカは燃料の油を得るためにかなり捕鯨をしていたんですね。そのために、燃料や食料の補給基地を求めて黒船がやってきたりもしましたが、その後、化石燃料が主流となりアメリカの捕鯨はあまり行われなくなった。一方日本は、文化的に高タンパク質な食材としてクジラの命を頂いており、そのヒゲなども余すところ無く三味線に使われたりしていましたが、高度成長期に捕鯨反対運動にあいます。これは”Japan as No. 1”の頃の、ジャパン・バッシングの一つとしての意味合いもあって、その後様々な団体との関係もあり、運動は激化しますが、その中でアメリカが「世界全体で捕鯨をコントロールしなければならない」という音頭をとり、国際捕鯨会議(IWC)において反捕鯨キャンペーンが開かれるようになりました。
うちの父は、私が物心ついたときから毎年この会議に科学者として参加していて、国を超えて捕鯨頭数の制御について考えたり、その際に市民の理解を得たりということをしていて、その姿を横で見てきていました。多分それが後から影響してきたんだと思います。

実は、私が東北大に移ってきたときも特にそういうこと(アウトリーチをすること)を強く意識していたわけではなくて、アウトリーチを始めたのは、CRESTを取ってからです。

CREST 「脳と学習」領域 大隅プロジェクト
ニューロン新生の分子基盤と精神機能への影響の解明
http://www.brain-mind.jp/

 

CRESTで、まとまった研究のお金を頂いたので、そのうちの何%かは、市民向けの何かを作ることに当てようと、ニュースレターを作り始めました。それが2004年からです。そのあと、2006年からGCOEが始まりました。このGCOEの拠点名に「社会へ還流する」という言葉を入れましたが、この還流には二つの意味を込めました。一つはこのプログラムで育成された人材が、研究者としても、アカデミア以外の社会に対しても還流するという意味。もう一つは、研究成果の内容を、社会に届けるという意味です。
アウトリーチ活動もお金と時間が必要なことなので、直接の理由としては大型研究費が取れたのでそれを市民へ還元したいという気持ちと、もともとデザインなどが好きだったので、どうせやるなら質の高いものをやってやろうじゃないの!」っていう気持ちで行なってきました。結果的に、これまでの活動ができて良かったなと思ってます。

— これまで開催されているイベントなどを拝見しても、非常に自然体でやってらっしゃるように、私もお見受けしています。

大隅:ええ。好きなことをやって、それで皆さんにも楽しんでもらえれば、一番嬉しいことだなぁと、思います。そんな感覚でやっています。

— そのような流れの中で、GCOEのお金がとれたときに、広報として長神さんを抜擢なさったんですね。

大隅:そうですね。やはり、きちんとした広報がしたくて。CRESTのニュースレターでは私が編集長のような立場で、他の先生にコンテンツとかもお願いして発行してきましたが、GCOEでは紙選びやレイアウト、ロゴデザインとか、そういった部分から彼にお願いしました。実際出来上がってくるものにダメだしすることも殆どなく、とても助かりました。

あと、こういう活動には、(市民に伝えるということと)逆の意味もあります。凄く気長な想いなんですが。編集の仕方としては、ニュースレター向けに頂いた文章にあまり手は加えませんでした。原稿をお願いする先生方にも「市民向けなんで、分かりやすくお願いします」とは言うんですけど、やっぱり頂く文章はちょっと難しい。でもだからといってその文章の直しなどにエフォートを割くことは、(研究時間に支障を来すため)あまり出来ないので、しなかったんですが、ただ、こういうことを書く機会があることで先生方にも市民向けのメッセージというものに意識を向けてほしかったし、先生方以外にも若い学生・研究者の人にも書いてもらって、こういうことに触れる機会を持ってもらいたかったんです。こうした市民への発信経験のある人が研究者になっていけば、将来できることも違ってくるんじゃないかと。すごーく、気の長い話なんですが(笑)。

— GCOEは研究費の中でも研究教育の観点が含まれるものですが、こういったプログラムで若い頃からアウトリーチの経験をしていれば、将来自然体でこのような活動が出来る人が増えていきそうですね、次世代の研究者には。そういうことが出来る人材も、このプログラムでは育てていこうという想いなわけですね。

大隅:嫌々やるのは、誰にとってもよろしくないですからね。あとは、こういうことは、得意不得意もあると思うので、適材適所でやっていければ良いんじゃないかなぁとも、思っています。その方が、全体として幸せというか。

— 一部の研究者だけにアウトリーチの役割が集中するのも、全体に均一に義務化するようなことも、どちらもよろしくないですよね。
ところで、最近は若い学生でもこういった活動に興味のある人増えつつありますが、正直、組織のトップの先生がこういう活動に理解があるか否かで、若手としてはだいぶ動きやすさが変わってきます(笑)。もちろん、いくらトップに理解があっても、常に研究との兼ね合いが問題にはなってきますが。

大隅:例えば山中伸弥先生(このインタビューは2011年8月に行われ、その後、山中先生は2012年ノーベル医学・生理学賞を受賞)は研究のレベルや市民向けの講演の内容も素晴らしいですが、いつでも彼ばっかりに、例えば「もっともっとアウトリーチやってください」と、何でもかんでもお願いするわけにもいかない。それは人材の使いどころを間違えているというか。分担も必要だし、かといって誰かがずっと同じ役割を担えば良いというものでもないし、できるときにできる人がやるという方が、長く続くんじゃないかなと思いますね。

— そのように、その時々でやれる研究者が研究と両立しながら、上手にアウトリーチ活動の計画や企画をしていくためには、広報専門員の存在が重要だと思いますが、日本だと特任(任期付)の職が殆どですね。

大隅:私も海外の情報を収集してますが、ヨーロッパは割と日本に近いですね。期限付きの研究プロジェクトに対して期限付きの広報のポジションがついていることが多いです。大きい研究所や、何かを新しくガッと立ち上げるときには、広報の専門の部署やポジションを作って、デザイナーやウェブ専門の人をインハウスで雇ったりしているようです。アメリカは早くからそういうことをやっていて、企業のように、研究機関や学会でも自前で広報のプロジェクトを進めています。

— 確かに、今回のサマースクール講師のDavid Rini さんがいらっしゃるジョンズホプキンス大学は、生物や医学分野で世界トップクラスの研究をしていることで有名ですが、その研究機関がサイエンスイラストレーションに力を入れていることからも、アメリカでは科学や研究機関が社会の中での立ち位置というものを意識していることがうかがえますね。

大隅:その辺は、アメリカではNIH(National Institutes of Health:アメリカ国立衛生研究所)が配分するような公的な研究費だけではなく、患者団体が力を持って企業などから寄付金を募って、自分たちがやって欲しい研究に研究費を付けるということをボトムアップでどんどんやっているので、基礎研究者であっても直接患者さんに説明する機会が多いんですよね。公的な研究費だと、一旦広く集められた税金をトップダウンで配分するというワンクッションをおいているけれども、直接患者さんと向き合うとなると、色々と違ってきますね。説明の仕方にしても、求められる研究成果にしても、切実さが全く違う。研究者内では必要だとすぐ納得される基礎研究の提案も専門家でなくとも分かるように説明しないといけない。アメリカではこのような基金が盛んになったことでアウトリーチも重要視されてきたということが言えると思います。
私はたまにブログで「こんなカッコいいパンフレットがあります」みたいなことを紹介してますが、ソーク研究所のカッコいいニュースレターがあって、表紙がね、Dale Chihulyのガラス細工なんですけど、研究所開設50周年記念にChihuly at the Salkというイベントを研究所をあげて行ったのです。ソーク研究所自体がルイス・カーンの建築として非常に有名ですが、あのシンメトリーな建物の中央にある、太陽が差し込む場所で展示をしてるんです。時間や季節で日の差し込み方が変わるので、ガラスがキレイに展示出来るわけですが、それを、カメラ好きの研究者が写真に撮って、その写真のコンテストが開催されたことがあります。で、それを、多額の寄付をしてくれるドネーター達が見に来れるようになっています。

ソーク研究所 “InsideSalk” http://www.salk.edu/insidesalk/articlew.php?id=186

 

— 単にアートの展示だけではなくて、双方向の交わりも持っているということですね。

大隅:なおかつ、ここで大事なのは、お金を惜しんでないんです!
そのガラスアーティストは Boston Museum for Fine Art で大きな展示会をやるような著名な人で、本当に一流の人なので、それなりのお金で呼んできてるんです。多額な寄付をしてくれるセレブにアピールするためには、何かを開催する際に、色んな意味で質の高いことをしないと、寄付なんてもらえないんです。

— 日本だと、いわゆる「市民向け」「一般向け」のアウトリーチイベントというと、お金をかけずに、無料イベントをやるというのがお決まりみたいになっていますね。

大隅:それは悪くない、決して悪いことじゃないんだけど、やり方は目的に応じて決めるべきですね。多額の寄付金が欲しいという裏心があったとしても、寄付が得られれば結果として研究のレベルを上げることにも繋がるし、研究機関同士がアウトリーチ活動を競い合っていいものが出来ていくことに繋がると思いますね。

— 研究だけでなくて、映画制作とかでもそうだとおもいますけど、日本だと中心的なところ以外の周辺の事柄や職が育たない印象がありますが、それはそういったところで働く人の十分な給与がないからなわけで、予算規模が小さいせいなのか、お金を生むためのシステムが悪いのか、そもそもお金を払う気がないからなのか、分かりませんが、いずれにせよ公的な資金以外でもお金を集めるシステムや姿勢は、もっとあっても良いと思います。

大隅:なんでもボランティアでやれば良いかというとそうではなくて、ボランティアだけではそれを担う人たちのキャリアパスが見えなくて人が育たなくなってしまいますね。一方でソーク研究所の例で言うと、研究所を案内してくれた人が実は地元の建築家のボランティアなんです。その人は生命科学の研究をやっているわけではもちろんないんだけど、研究所がルイス・カーンという非常に有名な建築家のものだということで、研究者のためにどういうコンセプトで造られたかということをよく知っていて、そういう観点から最初はツアーコンダクターを初めて、回を重ねるごとに段々研究内容のことも知ってツアコンとしてのレベルが上がっていくという感じなんです。直接研究をしているわけではない人が研究所に入ってきてくれて、ボランティアをしているんです。

— 日本は大きな公園なども少ないですし、大学が公園の様な機能を果たして、せっかくだからキャンパスで研究に関する展示とかをどんどんやればいいと思います。物理的にも色んな人に開かれた大学というか。

大隅:東北大の川内や片平のキャンパスなんて、まさに公園の様ですよ!(笑)
フランスには確か建物の数パーセントの予算を使ってフランスのアーティストの作品を設置させる法律があったりしますね。法律でなくても、多くの研究所では自分たちのステータスを高めるために自然にそのようなことをしています。
ところで、東北大の病院の中って、見たことあります?

— はい、昔私の祖母が入院していたことがあるので。そう言えば、母が大学病院の中が新しくなって、カフェや人気のパン屋が入るようになったと言っていました!

大隅:その新しくなったモホスピタルモールは是非見てもらいたいんだけど、東北大関係者で絵が好きな方から寄付してもらったものなどを展示したギャラリーもあります。先ほどのフランスの例で話したことに近い試みです。

— なんと言いますか、「余白」というか「余裕」というか、そういったところに、充実したプラスαを埋めていく様な試みが、日本の大学などには足りていない気がしますね。

大隅:日本の場合、40年で一気に成長して、今は急激に下ってしまっているので、バブルの後も成長がもっと長く続いていれば、日本にもそういった感性が緩やかに根付いていったのかもしれませんが。

— すぐに応用に結びつかない基礎研究なども、税金の使途の「説明責任」という文脈では、応用研究に比べて弱く、今の経済状況だと縮小していくかもしれないですね。

大隅:やはり、もう一つは、いつまでも国に頼っていてはダメということだと思います。強く思うのは、色んな意味で質の高いことをしたければ、使途の制限が厳しい国とやるだけでは、出来ないことがあるということです。

大学が「自力で稼ぐ」ことにもっと目を向けても良い筈だと、僕も思います。大学の研究成果は、ある意味「コンテンツ性」があるものなので、例えばiTunesUなどを使えば、100円くらい払って講義や大学が保有する「コンテンツ」を見たいという人はいるのではないかかと思います。また、僕らも経験していることですが、何かを作るというときに、大学のお金、つまり税金由来のものだけだと、色々と自由に作れないという側面が、確かにあります。

大隅:あとは、ある種の平等性というのも、やり辛い面があります。時間単価が決まっているとか、年齢、学歴、職種によって払えるお金が決まっているとか。ある意味非常に平等なことなんだけど。

— 大学の規定の額だと、他の分野・業界にとっては非常識な額で講演を依頼せざるを得ないことは、ありますね。

大隅:東北大医学部では面白い試みをしていて、毎年の同窓会の際に、その年に卒業して25年目になる学年が当番になって、同窓生から寄付を集めて、色んな方を講演に招いていますが、毎年のことなので、各同窓生が他の学年に負けじと、競って面白い企画を考えています。

— 大学の中の人間が、学外の方を招いて話を聴く機会があるというのは素晴らしいことですよね。我々がアウトリーチすることも必要だし、またその逆の体験もあって、両輪となるというか。学内の人たちが色々と話し合うきっかけにもなると思いますし。

大隅:私はいわゆる「市民向け」と言われる場で、専門家以外の方と話すことが多い方だとは思うのですが、実は、市民向けよりも専門が違う学者同士で話す方が、よほど難しかったりします。専門が近いもの同士なら、専門用語も交えて簡単に情報交換が出来ますが、一番極端な例で言うと、フェミニストの社会学者の方と、近年分かって来た男性と女性の脳の違いについて話したりしたら、もう大変です(笑)。どっちかがもう一方を説得なんて、出来ないです。全然聞く耳を持ってもらえないということもあるし。ごく最近では、同じサイエンスのフィールドでも、物理学者と生物学者では放射能のリスクに対する考え方が違う、ということなども感じます。
そういう、学者内での対話っていうものも、必要ではないかなぁと感じます。旧来の学術雑誌といった形体にとらわれない方が良いと思います。

— 我々もwebサイトがあるので、そういうことをしていければと思うのですが、対話・論争というものが、webなどでもっと行われていいと思います。論文にはならないかもしれないけど、社会に公開するという意味でも、分野を超えた学問の進展の意味でも、忘れてはいけない重要な試みだと思います。

大隅:日本の場合は、「2ちゃんねる」が早くから流行ったこともあり、webというものがハンドルネームを使って、匿名性が高くて、アングラで、といった印象も強いと思いますが、そういった匿名アカウントではなくて、自分の名前や立場、キャリアを明らかにした上で、その自分の経験から「私はこう思う」という風に語られることが、良いんじゃないかなぁと思います。

— 対話の場と言えば、先生はGCOEの企画として脳カフェをこれまで続けてこられましたが、今後も続けられるのでしょうか?

大隅:これまで7回行いましたが、GCOEが終了になるので、一端打ち止めになります。今後どういうカタチになっていくかは模索したいところです。

— 開催場所であったせんだいメディアテークという場も良かったように思います。僕は、仙台が地元ですが、地元の友達もふらっと参加していたりしました。どこからともなく、自然と情報が人々に伝わって、足を運ぶというか。やり方が仙台という街とフィットしていたように感じます。東京だと難しい形体だったようにも思います。

せんだいメディアテーク http://www.smt.city.sendai.jp/

 

大隅:仙台という街の文化度と、サイズがちょうど良かったと思います。東京だと、遊ぶところも沢山あって、イベントもメチャクチャあるし、人が分散しちゃうと思うんだけど。

— セミール・ゼキ博士と宮島達男さんとのシンポジウム・対談「脳科学と芸術との対話」は、市内はもちろん、東京からもお客さんが大分足を運んで、かなり話題になったと思います。震災を経て、今後もこういった活動を通して東北大の元気な様子が伝わり、注目を浴びると私も嬉しく感じます。それを見て、日本の他の地域の人や若い学生も元気を貰えると思いますし。

セミール・ゼキ博士と宮島達男さんとのシンポジウム・対談「脳科学と芸術との対話」http://nosumi.exblog.jp/12750918/

 

というわけで、今後は、どんな感じで活動をなさっていくのでしょうか?(と、ちょっと押し付けがましくも期待を込めて前のめりに聞いてみた)

大隅:(笑)

— 先生の周りでは、脳科学の若手研究者コミュニティが立ち上がったり、サイエンスエンジェルという活動であったり、東北大生が自発的に被災地支援の団体を立ち上げたりと、活気が感じられ、今後も盛り上がっていくのではないかと。

大隅:たぶん、私自身の性質としては、何かをずーっと継続していくということに向いているタイプではないので、何か新しい試みを探してやっていきたいと思います。そうですね、例えば、芸術がらみの対談でも、これまではヴィジュアル寄りのイベントをやってきましたが、もう少し音楽寄りのものをやってみるとか、色々なとっかかりを見つけていきたいです。

それと、サイエンスライターやサイエンスイラストレーターの方がもっとが増えていくといいなと、思っていて、そういった人を増やすためには、受け皿となるポジションやマーケットがないといけないと思うので、そこをどうやって増やしていこうかなぁと、考えています。アメリカでアウトリーチが成功しているのは、一つには、文系理系という溝があまり無いということがあると思うんです。例えば、カレッジでイラストレーターの勉強をメインでしていても、生物学の分野も学んでいる人も結構いたりするんですね。今の日本の制度のままだと、高校2年生くらいのときに文理が分かれちゃうわけですが、そうすると、その時点でサイエンスの分野に進む人・触れる人がものすごく「特殊な人」として限られてしまう。この先どんな未来が待ち構えているか分からない、想定出来ない時代に、のりしろを無くしてしまう様な教育で良いのかと、私はよく言っていますが、根本的にそのあたりの制度から食い込んでいかないと仕方がないと思います。

— 今日は色々なお話をうかがえて、良かったです。ありがとうございました。今後の展開も楽しみにしております。

 

 

他の回の記事はこちら
第1回 第2回 第4回