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Reports ネコとヒトの( ) -Love Metamorphose-

SYNAPSE Studentから届いたレポートと共にイベントを振り返ります。

2013.12.2
Text:SYNAPSE Lab.(おかべしょうた), Photo:丸尾和穂

 

9月頭に開催されたSYNPSE Classroom #2 「ネコとヒトの(           )-Love Metamorphose-」。ネコの認知能力などを比較認知科学的な観点から研究されている斎藤慈子先生(東京大学教養学部統合自然科学科講師)をSYNAPSE Professorとして、さらに、映像作家の山口崇司さん、アーティストのHouxo Queさん、ilove.catの編集長である服部円さん、Webプロデューサーの西村真理子さんをSYNAPSE Studentsとしてお迎えした本イベント。どのような過程を経てネコは今の姿になったのか、なぜ私たちはネコに惹かれるのか、私たちはどんな相手と関係性を築き愛を育むのか。ネコを主軸に展開された講義は様々な思索をめぐらせるものとなった。

当日の様子はUstreamでご覧頂けます。
ilove. cat さんのサイトではさらに詳しいレポートを掲載して頂いています。


ネコがネコになるまで

ネコを研究することの意義はどこにあるのか、比較認知科学という学問の説明から講義はスタートした。進化とは何か。自然淘汰理論の3つの前提など、ネコ研究の背景にある歴史的積み重ねについて講師の斎藤先生から分かりやすい解説が続く。そして、話題はネコへ。

ネコはどのような過程を経て今の姿になったのか。ネコの家畜化の歴史をイヌの場合と比較しながら、現在私たちが目にするネコの特性が獲得されてきた変遷に話が及んだ。とくに家畜化の過程でネコがヒトと関わることによって生じた形質について調査した研究がいくつか紹介された。ネコのコミュニケーション能力やネコ同士独特のコミュニケーション、ネコは飼い主の声を聞き分けているのかなど、どの研究もネコを飼っているヒトの心をくすぐる。また、ネコ好きとイヌ好きの心理的特性の違いなどにも話が及び、「ネコ好きはインドア派?」「イヌ好きはリア充?」など笑いも巻き起こった。

やがて、議論は核心「ヒトは何と関係性を築くのか」へと近づいた。

かわいさとは何か

ヒトが惹付けられる対象として幼児、幼若動物が挙げられるが、動物行動学者であるローレンツはこれら幼い動物がもつ共通性をベビースキーマと名付けた、と斎藤先生。さらに、画像処理により赤ん坊の顔のパーツを操作しベビースキーマを崩すと、かわいさが減少することや、大人の顔と比較して赤ん坊の顔はヒトの注意を惹付けることなど、ベビースキーマに関する研究が紹介された。そして、このベビースキーマにヒトがネコに惹付けられることのヒントが隠されているのではないかと、考察が拡げられた。

かわいさのその先の魅力

「ベビースキーマ」など「かわいい」を基軸に私たちが何に惹き付けられ行動するのか議論が盛り上がる。ネコアレルギーで長時間ネコと触れ合うことができず、近所の野良猫をパトロールしているというHouxo Queさんは、かわいいネコだけではなく、野良猫のような“やさぐれ顔”のネコにも愛着を抱くと指摘。また、ネコとの触れ合いは何年経っても飽きることがなく、ベビースキーマにおける「かわいさ」だけでは説明できない感情、“(           )”がネコ独自の魅力なのでは、と山口崇司さん。さらに、アニメーションにおけるキャラクター造形の変遷とベビースキーマの関連性にまで話が膨らんだ。

Classroom終了後も議論は尽きることなく、満腹法人芸術栄養学特製、キャットフード風フードを楽しみながら歓談が続いた。また、会場には本イベントに協力いただいたilove.catの書籍の並べられ、“我が家のネコ”話にも華が咲いた。

ネコに注目することで私たちの愛の変容(Love Metamorphose)に迫ったSYNAPSE Classroom ネコとヒトの(         ) -Love Metamorphose-。第1回目は終始とても和やかな雰囲気で議論が進んだ。ヒトが他者と関係性を築き、愛着を抱くことの不思議さに迫るためにも、今後もLove Metamorphoseシリーズは続いていく予定だ。本シリーズで少しでもLove Metamorphoseの輪郭が見いだせることを期待しつつ、最後に西村真理子さんと宮澤かずみさんから頂いた感想を紹介させて頂き、レポートを終える。

西村真理子(Webプロデューサー http://www.bascule.co.jp
「好き」、「かわいい」という感情は心の事象であり、人間が当然持っていい権利として“あたりまえ”に捉えていたが、「ネコ」を軸に「好き」、「かわいい」を科学的にアプローチする授業に参加し、改めて我が家にいるネコを心と頭で「かわえぇ〜♥」と考えることが出来るようになりました。「かわえぇ〜♥」は人の心を温かくします。ネコを見習い、授業で学んだことも活かし、「かわいい」を会話の中でも態度でも示せるように自分自身も精進して参りたいと思います。

宮澤かずみ(満腹法人 芸術栄養学 http://geijtueiyo.exblog.jp
ネコ勢力の強さ=そこに強い愛があるということを示していると思うと今回のテーマは愛を問う第1回目の議題にぴったりだったのだと思います。今回イベントで提供させて頂いた料理にもその想いを込めました。ネコとヒトの間に生まれる言い知れぬ感覚、 (       )。似ているところを見つけたり、共感し合ったような、通じ合ったような瞬間がある。けれど、どんなにネコのそばにいても、こんなにネコのことを考えても、やっぱりネコの全てはわからない。分かりたいけど、分からない。共通点と違うところ。その両方があるから私たちは愛情を持つことができる。ヒトとヒト以外との間に生まれる愛を感じるために、種の壁を感じてもらうメニューにしました。

人間にとっては美味しい物でも、ネコにとっては食べられない食材をたくさん使ったキャットフード風メニューです。

<メニュー>
玉ねぎたっぷり猫の手ケークサレ
・玉ねぎ、にんじん、ウィンナー、マスタード
・玉ねぎ、紫キャベツ、アンチョビペースト

カリカリキャットフードクッキー
・ココア
・抹茶
・イチゴ
・スパイス(ナツメグ、シナモン、カルダモン、ジンジャー)

コーヒー/紅茶

<ネコに対する食材の作用>

玉ねぎ・・硫化合物でタマネギ中毒と呼ばれる貧血の原因となります。

コーヒー、紅茶、お茶・・・カフェインを多く含む食べ物は中枢神経興奮作用があり下痢・嘔吐・体温不調・痙攣を引き起こします。

ココア、チョコレート類・・・心臓の欠陥や、中枢神経に作用し下痢や嘔吐を引き起こします。

スパイス・・・刺激が強く消化機能の負担となります。

甘いもの全般・・・肥満、骨や歯茎を弱める原因になります。